松本深圧院のオンラインサロンを準備中です。
ここでは会員同士の交流や情報交換を主な目的としていますが、付録として私のYoutubeも準備しています。
まだ一般公開できないのですが、5本の動画を撮り終えました。
なかなか喋るのは難しいですが、ちょっと面白くなってきました。
🍓股関節専門医のバイブル『変形性股関節症 診療ガイドライン』によると、わが国では臼蓋形成不全を基盤とする二次性の変形性股関節症が80%以上を占めるため、股関節症の自然経過を知ることは適切な治療法を選択するうえで重要である。
しかし自然経過を対照群と比較する研究はなく、すべての研究が分析的横断研究で、我が国からの報告であった。と
書かれています。
つまり、変形性股関節症に対して適切な治療法を選ぶには変形性股関節症の自然経過を知ることが重要であるにもかかわらず、自然経過に関する研究がほとんど行われていないのが現状の様なんです。
十分な研究もおこなわれないまま、「この病気は進行性の病気だから・・・」とか「どんどん悪化する病気だから・・・」と説明することは、「治療法は手術しかありません。」と説明するための前振りととらえられても仕方がないかもしれません。
変形性股関節症の自然経過をしっかり研究できていないので、選択肢が手術しかないと考えることもできるのです。
1980年~2000年頃の股関節専門医の先生方の中には、変形性股関節症の自然経過を明らかにしようとした先生方もいましたので、その一部を紹介してみます。
私が10年間勤務していた埼玉医科大学病院の海老原克彦先生らは1989年に進行期及び末期変形性股関節症患者の自然経過について報告しています。(現在西東京総合病院で活躍されている種子田先生の名前もありました。懐かしい。)
この研究では、進行期・末期股関節症の自然経過では約1割の症例に疼痛の自然緩解がみられ、初診後1年間の経過観察が勧められた。関節面の適合性の改善、roof osteophyte(臼蓋にできる骨棘)やcapital drop(大腿骨にできる骨棘)の形成、骨硬化像の増強などの骨形成変化、リモデリングは疼痛の改善に関連していた、と報告しています。
この内容をわかりやすく説明すると、変形性股関節症でも重度な進行期や末期の患者の場合、骨にできる骨棘、レントゲンでは非常に白く映り骨密度の高い骨硬化像、骨が新しく作られ形が整うリモデリング(骨の再構築)という骨の変化によって股関節痛は改善するということです。
また、1996年、岡山大学整形外科の赤沢啓史先生らも進行期・末期の10年以上の自然経過について報告しています。
この研究では、10年以上の経過観察が可能であった進行期・末期股関節症患者で十分な骨棘形成や、大腿骨が短縮し寛骨臼下縁小転子で支持された片側の進行期・末期症例ではTHA(人工股関節手術)を待機できる可能性があった、と報告しています。
この内容をわかりやすく説明すると、変形性股関節症でも重度な進行期や末期の患者の場合、骨棘や骨の変形による支持力が向上すれば人工股関節手術を行わなくても良い可能性があるということです。
これらの結果からは、骨棘、骨硬化像、リモデリングという骨の変化は、一般的に『変形』と呼ばれ悪者扱いされ説明されていますが、その真の姿は股関節痛を改善させ変形が治るために骨を変化させるという自然治癒力が働いていると考えられます。
やはり、変形とは治るための修復であると考えるべきですね。
次の記事では、このような様々な骨の変化一つひとつが自然治癒力による修復であることについて説明します。